鬼伝説V

1 鬼神社の鬼 始まり始まり

2 むかし、むかし。鬼沢がまだ「ながねはだぢ」と言われていたころのお話です。

3 ある日弥十郎が岩木山のあそべの森にしばかりに行きました。

4 弥十郎がしばをかっていると、森のおくから天にもとどく大人(おおびと)があらわれました。

5 大人は「すもうとって勝負しねえが。」と言いました。弥十郎は少しおどろきましたが、「よし、勝負だ。」と答えて、楽しくすもうをとりました。

6 その夜、弥十郎がねていると、外でドスンと大きな音がしました。」

7 起きて見てみると、山のようなしばがつまれてありました。

8 それから、弥十郎と大人はなかよくなり、毎日すもうをとっていました。楽しく遊んだあとは、かしわの木の下で休んだりしました。

9 ある日のこと、弥十郎がしょんぼりした顔でやってきました。

10 「どうしたんだ。しょんぼりした顔で。」と大人が聞くと、「田さ水っこなくてこまってるんだ。」と弥十郎が言いました。大人は「わさまがせろ。でも、わの仕事をしているところは見ねんでけ。」と言いました。弥十郎は決して見ないことを やくそくして帰りました。

11 ところが、弥十郎のおかみさんが、いつも弥十郎が出かけているのでこれはおかしいと思って、山へ行ってみました。

12 見てみると、なんと、鬼が岩をどかしているではありませんか。

13 おどろいたおかみさんは、「山さ鬼いだ!」と、村人にしらせてしまいました。

14 おどろいた村人たちは家の中にかくれてしまいました。

15 次の日、村人たちが外に出てみると、田んぼにたくさんの水が流れているのでびっくりしてしまいました。「これで米とれるぞ。」と、みんな大よろこびでした。大人は谷ぞこから水をひいてひくい方から高い方へ流れるせき、「さかさぜき」をつくってくれたのでした。弥十郎は大人に会いに行きましたが、大人は消えていなくなっていました。

16 大人のつくったせきのおかげで「一か月雨がふらなくても水不足にならない、一か月雨がふりつづいてもこうずいにならない」土地になりました。村人たちは大人を鬼神様として鬼神社をつくり、せきをつくったときの道具をかざりました。

17 そして、「ながねはだち」は、鬼がつくったせきのあるところとして「鬼沢」と言われるようになりました。

おしまい